01 / FIELD NOTE

この村では何が起きている?

レジン方式では、各レイヤーが前のレイヤーやサポートに繋がっていない「island」があると、樹脂槽内で失敗しやすい。大型モデルは中空化して樹脂使用量と剥離力を下げ、内部に未硬化樹脂が残らないようdrain holeも必要になる。Lychee Slicerは公式ドキュメントでIsland検出やHollowing機能を提供しており、こうした前処理が独立した作業であることが分かる。EtsyやPatreon系のミニチュア商品ではRaw STLに加え、Pre-supported STLと編集可能なLycheeファイルをセットにする販売が一般的で、サポート品質が商品価値の一部になっている。

02 / WHY IT EXISTS

なぜ、これだけで市場になるのか

サポートは一度置けば終わりではなく、印刷方向と失敗リスクの設計である。細い武器や指先には軽いsupport、重量部には強いsupportが必要で、接点を増やしすぎると表面が荒れる。自動supportは便利だが、隠れたislandや大きな吸盤形状、排液できない空洞を完全には防げない。ミニチュア購入者は造形そのものを楽しみたいので、毎モデルのsupport設計に数十分〜数時間かけたくない。そのため「すでにテスト済みで印刷しやすい」データがRaw STLより強い価値を持つ。

03 / WORKFLOW

実際の仕事はこう進む

  1. 01

    モデルの向きと分割を決める

    造形面、サポート痕、剥離面積を考え、プレートへ対してモデルを傾ける。大きなパーツは必要に応じて分割し、重要な顔や表面へsupport痕が集中しない向きを選ぶ。

  2. 02

    中空化と排液を設計する

    大型モデルでは肉厚を決めてhollowし、内部樹脂を排出・洗浄できるdrain holeを複数配置する。閉じた空洞やカップ形状が残らないか断面を確認する。

  3. 03

    サポートを配置しislandを潰す

    自動supportを叩き台に、重量部、細部、最初に出現するislandへ必要なsupportを追加する。Lychee等のIsland検出を使い、独立レイヤーが残っていないか反復確認する。

  4. 04

    実機テストして配布データを作る

    実際に印刷し、support除去性、変形、失敗、表面痕を確認する。Raw STL、Pre-supported STL、編集可能なLycheeプロジェクトを分け、対応サイズやテスト条件を記載して販売する。

04 / MONEY

どこに金が流れる?

Pre-supportedは販売ページ上で明確な付加価値になっている。EtsyのミニチュアSTL商品にはRaw STLだけでなく、Pre-supported STLとLychee .lysファイルを同梱する例があり、購入者がすぐ印刷できることを商品価値として訴求している。Patreon系のミニチュア制作者でもsupport済みデータを提供する文化がある。個別の「support代行」市場より、造形物そのものの販売単価・満足度を上げる制作工程として経済価値が組み込まれているのが特徴である。

05 / INSIDER VIEW

外から見ると見落とすこと

外から見るとスライサーの「Auto Support」を押せば終わりに見えるが、経験者が見るのはislandだけではない。大きな断面が一気に剥がれる吸盤効果、空洞内の未硬化樹脂、細部の変形、support痕を残したくない面など、失敗と後処理のトレードオフがある。またプリンター、レジン、露光条件で最適supportは変わるため、「すべての環境で100%成功」とは言えない。テスト条件を明示することが商品信頼性になる。

06 / AUTOMATION

AI・コードでどこまで削れる?

既存Slicerもisland検出や自動supportを提供しているため、完全自動化よりQA強化に余地がある。モデルを回転させて断面積、island、カップ形状、排液経路、support密度を評価し、複数orientation候補をスコアリングできる。さらにsupport接点が顔や細密テクスチャへ集中していないかを検査し、テスト印刷結果をモデルごとに記録する。販売者向けにはRaw STLからPre-supported版を作る反復工程をバッチ化し、最終チェックだけ人が行うツールが有望である。

07 / ENTRY ANGLES

外からこの村に入るなら

  1. STLを入力すると複数のorientation候補についてisland数、最大断面、カップ形状、support痕リスクを比較表示する「Pre-support設計レビュー」ツール。
  2. ミニチュア制作者向けに、Raw STL一式からLycheeプロジェクト、Pre-supported STL、テストチェックリストまで作るリリース前処理代行。
  3. 既存Pre-supportedモデルを解析し、support不足、閉じた空洞、drain hole不足、細部への過剰接点を検査する販売者向けQAサービス。
08 / CAVEATS

この市場を雑に扱うと危ない点

  • プリンター、レジン、温度、露光条件が違えば同じsupportでも成功率は変わるため、100%印刷成功を保証しない。
  • 中空モデルの排液不良は未硬化樹脂を内部へ残す危険がある。drain holeと洗浄可能性を必ず確認する。
  • 購入したSTLをsupportして再販売できるとは限らない。元モデルのライセンスで改変データの再配布条件を確認する。
09 / EVIDENCE

この市場があると判断した根拠

最終確認: 2026-09-25